再召喚され全てを失った元聖女は、麗しの騎士団長様の溺愛で絶望から立ち上がる。

ロードの魔力

***

 それから数日後。

 なんだか朝から部屋の外が騒がしい。誰かが走ってきたような足音と、それを止めるような焦ったような声。だけど、その言葉の内容が聞き取れなくて目が覚めた。


「そうだ……私……」


 魔力暴走を抑えるために、魔力を抜くことを決意したのは昨日のことだった。

 セイロン様に告げると、苦しそうな表情で了承してくれて、私の額から魔力を吸い取ってくれた。

 元々神殿に来てからはセイロン様の魔力しか譲渡してもらっていなかったため、抜くのは簡単だったらしい。

 アレン君とミレアに事前にロード様へお手紙を書くように頼んでおいたから、私が魔力を抜き言葉を理解できなくなることは伝わっているはずだ。

 あれだけ助けてもらったのに、申し訳ない気持ちが募っていく。

 今ミレアがやってきても、私は会話することすらできないだろう。

 ため息をついていると、騒がしかった声がどんどん近付いてきて、そして部屋の扉が開いた。


「セーラ!」


 その声を聞いて、金色の髪の毛と深い青色の瞳が視界に入る。

 目の前の光景が信じられなくて、目を見開いた。


「ロー……ド、さま?」

「セーラ!」


 ぎゅっと抱きしめられた身体。冷たい鎧の硬さが、ついさっきまで戦地にいたのではと思わせて苦しくなった。


「どうしてここに……」


 呟くけれど、そうだ、伝わらないんだと思って口を閉ざす。

 ロード様はそんな私の身体を一度離し、顔を覗き込んでくる。

 苦しそうに微笑んで、


「セーラ。タダイマ」


 そう呟いてくれた時に、今まで胸に溜め込んでいた不安が溢れ出して。


「っ……おかえり、なさいっ……ロード様っ」


 今度は私から抱きついて涙を流した。

 しばらく泣いてようやく落ち着いた私に、ロード様は背中をポンポンと撫でてくれた。

 そして指を四角い形に動かして、


「アリガトウ」


 と言ってくれて、無事に手紙を受け取ってくれたことを知る。

 もしかして、ミレアとアレン君に頼んだ手紙を見て、わざわざここまで来てくれたの?忙しいはずなのに。

 その気持ちが嬉しくてたまらなくて、


「ありがとうロード様。嬉しい」


 そう笑うと、ロード様も安心したように笑ってくれた。

 その後セイロン様、ミレアがやってきて、ロード様と何やら話を始める。

 私のことを話しているのはわかる。けれど、内容までは全然聞き取れなくて。

 魔力がある時は文字に関してだけ勉強していたから、翻訳機能が働いていない時に何を喋っているのかわからないということも問題だと思った。

 以前ロード様に日本語を教えた時はどうやって伝えたんだっけ。そう考えるけれど、もしかしたらそれもあの頃の膨大な魔力が上手いこと作用してくれていたのかもしれない。
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