再召喚され全てを失った元聖女は、麗しの騎士団長様の溺愛で絶望から立ち上がる。
「……セーラ?」

「あ、はい」


 呼ばれてようやく視線を戻すと、深い青色が私をじっと見つめる。そして徐に立ち上がり、私の元へとやってくる。


「ロード様……?」


 そのまま私の額に手を当てるから、びくりと肩が跳ねた。


「んー……熱はないな」

「え……?」

「なんかさっきからボーッとしてるから。もしかして熱でもあるのかと思ったんだが。……疲れが溜まってるんだな」

「ぜっ! 全然元気です!」


 まさか、何度もロード様の手やお顔に見惚れていたなんて、言えるわけもない。

 恥ずかしくて手で顔をパタパタと仰いでいると、小さく笑ったロード様がその手を掴む。


「っ、ロード様?」

「神殿から王宮に転移魔法は使えない。だからセイロンが来るまでまだ時間はある。少し寝るか?」

「え!? いえっ、大丈夫です。眠くないので! 起きてますから!」

「そう言わずに。ほら」


 ロード様はそのまま私の手を引き立ち上がらせ、ベッドに向かって歩いていく。

 そして私を寝かせ、その隣にロード様がそっと腰掛ける。


「あ、あの。ロード様」

「ん?」

「これは、その……」


 一体、どういう状況でしょうか。

 横になった私の隣に座り、布団をかけられた私のお腹あたりを優しくトントンとしてくれる。


「王様と一対一で話すのは緊張しただろう。多分、セーラが自分で思ってるよりも身体は疲れてるはずだ。セイロンが来たら起こすから、一度しっかり眠るといい」


 大変だ。ずっと勘違いされてる。だけど、本当のことも言えない。どうしよう。

 そうあたふたしているうちに、ロード様の手の一定のリズムにより本当に瞼が重くなってくる。


「ほら、眠くなってきただろ?」

「は、い」


 疲れているというのは、あながち間違いではなかったみたい。どうしてロード様は私以上に私のことがわかってしまうのだろう。そう思いながらも、瞼に力を入れる。

 セイロン様を呼んでおいて私が眠るなんて、さすがに許されないだろう。しかし必死に眠気に抗っていると、その心中を察したようにロード様が微笑んだ。


「大丈夫だから。そんなに心配しなくても、あいつはセーラが疲れている方が嫌がると思うよ」

「でも……」

「それに、俺もセーラが疲れてるの嫌だから」


 いつのまにかトントンされるのは終わっていて、頭を撫でられる。その手が気持ち良くて、温かくて。


「ロード、さま……」

「ん?」


 縋り付くようにその手を取り、無意識のままに頬を寄せる。


「っ……」

「ぜったい、おこしてくださいね……」

「っ、あぁ」


 返事を聞いて、身体の力を抜く。


「……セーラ。おやすみ」


 眠りに落ちる瞬間、額に何か温かいものが触れたような気がした。
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