再召喚され全てを失った元聖女は、麗しの騎士団長様の溺愛で絶望から立ち上がる。
「セイロン様、神官の方が至急報告したいことがあると仰せです」

「今行く。殿下、セーラ様、少し席を外します」

「あぁ」

「行ってらっしゃいませ」


 侍女と共に応接間を出ていくセイロン様を見送り、私とロード様はため息をつきながら目の前の地図を見つめ続ける。


「瘴気の作り出し方については、何かわかったことはあるんですか?」

「……まだだ。ただセイロンの方が詳しいから瘴気の件に関してはセイロンに一任しているんだ。今呼ばれたのがそのことに関してだといいんだが」


 頭を抱えてしまうロード様に、私も言葉を失う。

 しかしすぐに部屋の外からセイロン様が走って戻ってきて、


「殿下! わかりました!」


 そう叫びながらテーブルに資料を置いた。


「セイロン、わかったというのは」

「はい、瘴気を作り出す方法の手がかりです!」

「なに!?」


 セイロン様は心を落ち着けるように深呼吸をした後、ロード様と私に見えるように地図を指差す。


「ハリスに瘴気が現れたのが、実はずっと疑問に感じていました」

「それは何故だ」

「何者かが意図的に瘴気を作り出したと考えると、ハリスは他の地域に比べて特殊な地形をしているからです」

「……特殊な地形?」


 改めて地図をよく見てみると、確かに他の瘴気が出た地域に比べて、ハリスだけは山に囲まれているようだった。


「ここ、ハリスを囲う山は、全て魔鉱山なんです」

「魔鉱山というのは?」

「魔石が取れる山ということだ。しかしセイロン、その魔鉱山は確か採掘場としては機能していなかったはずだが」

「そうなんです。この山で取れる鉱物は多量の魔力が含まれてはいるものの、表面が非常に硬い割に熱に弱く加工すると脆くなってしまうことから価値がないと判断され、現代のドラムトンでは採掘すらされていないものでした。こちらがその魔石に関する資料です」


 セイロン様が見せてくれた資料には、その魔石の絵と詳しい説明が書かれていた。しかし難しい言葉が並んでいて私には読めそうもない。

 見かねたロード様が要約してくれた内容を聞くと、採掘しようとしても強い魔法でないとびくともせず、その割に内部からすぐに砕けてしまうらしく、いかに扱いが難しいかが書かれているらしい。


「それで、この魔石がどう関わっているんだ」

「はい。実はこの魔石から、微量の瘴気反応が出たのです」

「なに!?」

「はるか昔からその採掘のしづらさ故に価値がないとされていたため、その内容物は詳しく調査されてきませんでした。しかし今回のハリスの調査で、あちこちにこの魔石が落ちていることを確認し、持ち帰り調査いたしました。そこで得た結果がこちらです」


 新たな資料を読むロード様が、


「これは……とんでもないことだぞ……」


 青ざめたような表情で呟き、


「至急王様に謁見したい!」


 指示された侍女が慌てて部屋を飛び出し、待っている間ロード様がセイロン様に向き直る。
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