再召喚され全てを失った元聖女は、麗しの騎士団長様の溺愛で絶望から立ち上がる。
「喉は乾いていないしお腹も空いていません」

「そうですか。ではどうしましょう。本でも読みます?」


 当たり前のように呟くカイエン様に我慢の限界が来て、


「……私を揶揄っているんですか!?」


 そう叫んでしまう。

 だけどカイエン様は面白そうに


「まさか。……あなたが無鉄砲なのかただ頭が悪い人なのかを観察しようと思っていただけです。どうやら後者ではなさそうだ」


 と、また肩をすくめた。


「それで、セーラ様をどうするか、でしたか?」

「……はい」

「安心してください。まだ殺すつもりはありません」


 まだということは、いずれ私を殺すつもりなのだろう。利用するだけ利用して、価値がなくなった時に。ということだろうか。


「私はどこかに連れて行かれるんですか」

「いえ、しばらくはこのままこちらにいてもらいます」

「……ここに?」

「えぇ。入り口には簡単には破れない結界を張っておきましたので、どなたも入れはしないでしょう。必要なものは全て魔法で用意しますから、住み心地は良いはずですよ」


 さっきの瘴気でできた結界のことか。


「……セイロン様なら、その結界を破れるのでは?」


 セイロン様の方が役職は上。魔力量だってセイロン様の方が上だろう。

 しかし、カイエン様はクツクツと笑い始める。


「……何がおかしいんですか」

「いえ、すみません。まだわかっていないんだなと思ったら面白くて」

「……何がですか」

「結界はセイロン様にも破れませんよ。魔力量も、技術も。全て私の方が上ですからね」


 得意気に微笑むカイエン様に、


「まさか、ずっと隠してたんですか?」


 そう問えば


「ご名答。よくわかりましたね」


 と拍手をする。

 その音が嫌なくらいに耳に残り、眉を顰めた。

 まさか、この計画のためにずっと皆を騙していただなんて。

 信じられないその執念に言葉を失う。


「あの……」

「はい、なんですか?」

「カイエン様の、目的はなんなんですか」


 一体、何が目的で。何のためにこんなことをするのか。いくら考えてもわからない答えを問うと、カイエン様は


「そうですね……国を、本来あるべき姿に戻すこと。でしょうか」


 と、優雅に紅茶を飲みながら答えた。


「それは、どういうことですか」

「先ほどから私が答えてばかりですよ。少しはセーラ様も私の質問に答えてくださりますか?」


 のらりくらりと躱されている気がして本当にやりにくい。だけど、根を上げるわけにはいかない。


「……なんでしょう」

「どうして、浄化なんて始めてしまったのですか」

「え?」

「二度目の召喚の折、あなたに魔力が無いことに私がどれだけ安堵したことか。ご存知ないでしょう?」


 でも、私に魔力を注いだのはカイエン様で。


「ふふ、魔力の譲渡をしたのは私だとでも言いたげな顔ですね。……そうです。本来ならあのまま放置しておきたかったのですが、ロード殿下が言語と魔力の関係に気が付いてしまったため仕方なかったのです」


 そうだ。魔力が無いことに気が付いたのはカイエン様だったけれど、そこに譲渡の案を出したのはロード様だ。


「魔力が安定して、言語理解も問題なくなった。あのまま静かに一年待てば、何事もなく元の世界に帰れたのに。どうして黙っておくことができなかったんですか?」


 聞かれて、やはり私の浄化が邪魔だったんだと悟る。
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