再召喚され全てを失った元聖女は、麗しの騎士団長様の溺愛で絶望から立ち上がる。
「……見て見ぬ振りなんて、したくなかったからです」

「しかし、あなたはこの世界の人間ではないでしょう。ドラムトン王国が滅びても、なんら関係ないはず。それに、あなたは一度目の時からずっと元の世界に帰りたがっていたそうじゃありませんか。何もせず待ち続けているだけで良かったのに。……どうしてですか」


 その"どうしてですか"に、たくさんの意味が込められている気がした。

 どうして自ら名乗り出たのか。どうして黙っていてくれなかったのか。どうして。


「……それが、私の使命だと思った。聖女としてこの国を助けるのが、私の運命だと思った。……ただ、それだけです」


 黙って見ていることもできた。何もせずひっそりと生きることもできた。

 だけど、私にはそれが耐えられなかった。たったそれだけのことだ。


「生まれがどことか、異世界から来たからこそ私には関係がない。目の前に私を救ってくれた人がいる。助けて励ましてくれた人がいる。その人たちが困ってたら、自分にできることは恩返ししたい。そう思うことの何がおかしいんですか?」

「……あなたは、どこまでも優しく残酷な人なんですね」


 その言葉が、重くのしかかった。


「いいでしょう。少し、昔話をしましょうか」

「昔話……? あなたが千年前の戦争時の功労者、フォード公爵の末裔ということはわかっています」

「ははっ! さすがだ。もうそこまでたどり着いていたんですね。……でも、その先は知らないでしょう?」

「え?」

「フォード公爵が当時の王に投獄された後の、我々一族がどうなったのかを」

「……ここ、ハリスに閉じ込められていたとは聞きました」


 その、続きということ?


「我々フォードは、王により存在ごと国の歴史から消されました。瘴気を生み出す方法を葬るために。しかし、我々は諦めていなかった」

「それは……」

「いつか、我々を消した王族を同じ目に合わす。そして、戦争の功績により我々がいずれ手にするはずだったあの玉座を、取り戻すために」


 取り戻す? ということはつまり、フォード公爵は本当に反逆を企てていたということ……!?


「ははっ、驚いた顔をしていますね? そうです。フォード公爵は、当時反逆を企てていました。戦争時に暗躍し、多大なる貢献をする。当時の王には、嫡男がいなかったんです。そのため、王族の親族であるフォード公爵の一人息子を新たな王に立てる算段だった」

「一人、息子を」

「えぇ。もし反対にあっても、瘴気をチラつかせれば勝てるはずだった。我々フォードは、新たな王となるはずだった! ……それなのに、当時の王は瘴気を恐れてフォードを投獄した! 魔力を封じる枷をつけて! 二度とそこから出すこともなく! フォードという名前も歴史から消して!」


 声を荒げたセイロン様の目には、涙が光っていた。
< 91 / 110 >

この作品をシェア

pagetop