アンコールは君だけに ~孤高のピアニストと秘密の契約婚~
 スポンサーの件で突き放したことだって、謝りたかった。
 紬希が何のために動いたかちゃんと理解していると伝えたかった。
 帰ってきたら、すべて話そうと思っていたのに結局言えなかった。

 ――また、言えなかった。

 奏は、窓の外を見たまま小さく息を吐く。
 撫子の言葉が、ふたたび蘇る。

『奏さんは、昔から自分の気持ちを言葉にできない人なの』

 わかっている。わかっているから、余計に苦しい。
 帰ってきたら、言おう。帰ってきたら、全部話そう。
 それまで、待っていて――そう思いながら、奏は飛行機に乗った。
 ……紬希が屋敷を出たことを知るのは、ベルリンのホテルで手紙を受け取ってからのことだった。
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