アンコールは君だけに ~孤高のピアニストと秘密の契約婚~

 ――もう一度……紬希に聴かせたい。

 何があっても起こっても。その衝動が、指を動かしていた。
 演奏が終わり、周囲を静寂が包み込む。
 幻想的でありながらも明るく灯る街のイルミネーションのひかりが、窓から漏れている。
 軽井沢で手を繋いで歩いた夏は、はるか遠い。が。

 ――まだ、間に合う。

 奏は、ゆっくりと立ち上がり、決意する。

 ――間に合わせる。終わらせて、たまるか。

 行かなければ。
 その言葉が、胸の奥底から湧き上がっていた。


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