アンコールは君だけに ~孤高のピアニストと秘密の契約婚~

「泣くな」
「泣いていません」
「その状態を――」
「泣いていません」

 奏は、小さく笑った。
 それから、紬希のあたまに手を置いた。
 いつもの、不器用な仕草。

「……ひとりじゃない」

 低く、静かな声。

「俺も、そうだ」

 紬希は、唇を噛んだ。
 泣かないようにしながら、奏の胸に額を当てた。
 奏の手が、紬希の背に回る。
 ハンカチを奪われ、くい、と顎を持ち上げられ、視線が重なった。
 ホールの外では、まだ拍手が続いている。
 静かに傾いていく太陽が沈みゆくなか、やがてふたりの影はひとつになる。
 あの夜からずっと共鳴していたふたりの薬指には、お揃いのプラチナの輝きが煌めいていた。


 ――fin.

< 224 / 224 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:34

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

カットNG、恋はOK ~髪フェチ美容師は失恋女子を放っておけない~

総文字数/7,813

恋愛(純愛)20ページ

超短編!フェチから始まる溺愛コンテストエントリー中
表紙を見る 表紙を閉じる
浅倉栞奈(あさくらかんな)は 三年間付き合っていた彼氏に振られた夜、 美容室へ飛び込んだ。 「全部切ってください!」 ところが彼女を見た美容師がそれを拒否。 「その髪は切れない」 なんとサロンオーナーの 峰岸蒼人(みねぎしあおと)は 栞奈の髪に一目惚れ!? その日は髪を切りそろえるだけにした栞奈は 彼のことが気になってふたたび来店。 今度は「カットモデルになってほしい」と 言われてしまい――?    * * * 失恋女子 × 髪フェチ美容師 これは、髪フェチ美容師に見初められた失恋女子が、 自分らしさと新たな恋を手に入れるおはなし。
隠れ許嫁は最終バスで求婚される

総文字数/27,790

恋愛(純愛)53ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
桧林百寧(ひばやしもね)二十五歳。 お隣のいっきお兄ちゃんが好きだったけど 彼が何も言わずに上京して以来 素直になれなくて同年代の異性とつきあうことを 繰り返していた。 だけど男運が悪いのか たいてい長く続かない。 三か月前に結婚前提の同棲をはじめたものの、 案の定裏切られてアパートを逃げ出してしまう。 無人の実家に戻ろうと最終バスに乗ったら寝過ごして……。 「お客さん、終点ですよー」 運転手さんがまさかの初恋のお兄ちゃん。 彼の気持ちなどつゆ知らず玉砕覚悟で告白したら、 「いまからモネを俺だけのモノにする」 えっと、それってどういうこと!?    * * * 桧林百寧(25)平凡な会社員  ×  黒戸一季(30) バスの運転手 これは初恋のお兄ちゃんを忘れられずにいた モネちゃんが告白したら 突然求婚されて溺愛されるおはなし。 ……なんだけどなんだか裏があるみたい。 お隣の女の子が 無防備に自分のテリトリーに迷い込んで来た 彼の本心は!? ※以前他サイトに掲載した短編を コンテスト向けに大幅加筆修正しております。
恋愛観測

総文字数/8,557

恋愛(学園)19ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
都会に馴染めない少女 × 星が嫌いな少年 黄昏時、都会の高校の屋上で、 天体観測を通じて、ふたりは距離を縮めあう…… 父親の転勤で急遽引っ越し、編入することになった香子(こうこ)。 人間関係に問題はなかったけれど、田舎で暮らしていた彼女は、 二か月経過した今も都会の空気になじめずにいた。 そんなある日、地学準備室で彼女は同じクラスの少年、 日雀(ひがら)と出逢う。 彼は、星が嫌いな天文部員だというが……?

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop