アンコールは君だけに ~孤高のピアニストと秘密の契約婚~
* * *
家政婦長の佐伯に案内された紬希はずらりと並んだドレスを前に困惑していた。
財団のパーティーは、来週に迫っている。
「奥様のお肌には、このあたりが映えるかと思いますが」
どれを選べばいいのかわからない紬希をよそに、佐伯が迷いなくシャンパンゴールドのドレスを取り出す。
紬希はそれを受け取って、鏡の前に当ててみた。
「お似合いですよ」
「こ、こんなの、着たことないです……」
自分が持っていたのは母が若い頃に着ていた黒いナイトドレスだけ。華やかなドレスとは無縁だった紬希は鏡の向こうで途方に暮れた表情をしている。
そのやりとりに気づいたのか、背後で声がした。