アンコールは君だけに ~孤高のピアニストと秘密の契約婚~
「それでいい」
振り返ると、奏が扉の前に立っている。
いつからそこにいたのか、気配すら感じられなかった。
「え、あ……これで大丈夫、ですか?」
「問題ない。似合っている」
それだけ言って、踵を返す。気まぐれな黒猫みたいな彼の背中を見送り、紬希はきょとんとした表情をする。
褒められた? と気づくのに少し時間がかかった。
――いま、似合っている、って言ってくれた!?
鏡の中の自分を、もう一度だけ見る。
シャンパンゴールド。思ったより悪くない。