さくらいろのあお
 いつの間にか部室にいた柊部長は「県大会予選に出る人がほとんどだから! 大会前だし指導対局をしよう! 僕と松岡くんが先生役で多面指しをしよう!」と言う。
 多面刺しとは、先生一人に教えてもらう対局者が四、五人同時に相手になることだ。
 部員達は急いで机をコの字型に整列させて、指導対局の準備をした。
「柊部長も有言実行だな。将棋部が大事なのだな」
 私は心の中で呟いた。
 そして指導対局が始まった。
 将棋を指す柊部長も、松岡くんも真剣な眼差しで、私は淀みない心を感じる。
 私は松岡くんに稽古をつけてもらう。
一手一手に重みがある。
 格下の私への侮りがない。
 四段が、一級と指す時は四段として対峙する必要は全くない。二段くらいの棋力で相手をしていればまず負けない。そのような侮りが、指先から全く感じない。
 真剣に相手をされている。
 琴音さんはデートに行っちゃいましたけれど。
「参りました」
 松岡くんに負けたとき、松岡くんは手短に感想戦をしてくれた。
「詰将棋の本は今の棋力で選んで読むといい。寄せの本は、少し背伸びをすると発想が身につく」
 次の指導対局は柊部長が相手だった。
 柊部長も、丁寧に稽古をつけてくれる。
 私はつい余計なことを考えてしまう。
 二人とも真面目なのに琴音さんに振り回されているのではないかと思う。
 余計なお世話かもしれないけれど。
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