笑う君には福来たる

後日談

 実のところ、鬼丸は別に福子が嫌いなわけではない。
 彼にとっては、からかいがいのある幼馴染。そんなところである。

 文化祭が終わり、後片付けをしていた時、クラスメイトが言っていた。

「小田倉さん、桐谷くんと一緒に文化祭回ってたの見たよ」

 ――福子と悠真が付き合い始めたのを知った時、鬼丸はなんとも言えない気分になった。
 別に嫌いではないけど、恋愛感情があったわけでもない。
 幼馴染が、クラスメイトと交際してるだけ。
 それだけのことなのに、妙にもやもやした。

 自分の感情がわからず、首を傾げながら、文化祭で出たゴミの袋を持って廊下を歩く。
 途中、視界に入ったのは、やはり福子であった。

「おーい、お多福……」

 声をかけようとして、止まる。
 福子は、悠真と談笑していた。
 それが、やけに楽しそうで、幸せそうで。

 ――あれ。なんかもう、言えねぇな。

 そう悟ってしまった。

 鬼丸はこそこそと隠れるように、うつむいて2人のそばを通り過ぎる。
 なぜか目が合わせづらかった。
 気づかれなかったようで、ほっと息をつく。

 ――いや、なんで俺、こんなことしてるんだ?

 別に隠れる必要もなかったのに、なんだか福子の前に胸を張って出られない。
 理由はわからなかったが、これだけはわかる。
 ――もう福子は、鬼丸のからかえる相手ではない。

 ……あれ。
 もしかして俺、今まで嫌なやつみたいになってなかった?

 今更気付き、少し恥ずかしくなる。
 背後からは、福子の笑い声が聞こえていた。
< 2 / 2 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:3

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

八王子先輩と私の秘密

総文字数/9,954

恋愛(オフィスラブ)5ページ

超短編!フェチから始まる溺愛コンテストエントリー中
表紙を見る 表紙を閉じる
「今日もいい匂い」 「耳元で喋るのやめてください!」 ――王子様だと思っていた先輩は、ちょっと変態でした。
社長秘書に甘く溶かされて

総文字数/51,394

恋愛(オフィスラブ)19ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
婚活パーティーで出会った相手は、製菓企業の社長秘書。お菓子よりも甘い二人の恋。 冴原真奈美(さえはら・まなみ) 本作の主人公。25歳女性。 製菓企業で働く会社員。幼い顔の男性キャラが好きで、少しオタク気質。 永井鷹夜(ながい・たかや) 真奈美の恋人。32歳男性。 製菓企業で社長秘書をしている。 敬語で礼儀正しく振る舞う、美少年と見間違うほど幼い顔のイケメン。 銀髪碧眼だが、その髪色には秘密があるらしい……?
表紙を見る 表紙を閉じる
高身長のため、幼少時から男物の服を着ているせいで『イケメン男装女子』というイメージが定着してしまった主人公・花宮霧緒(はなみや きりお)。ヤンデレの素質があるお嬢様の金子志保(かねこ しほ)と「私の王子様になって」という約束をしてしまったが、本当は可愛い服を着たいし女の子扱いされてみたい。そんなある日、クラスメイトでオネエ男子の剛田雪之丞(ごうだ ゆきのじょう)にショッピングモールで出くわして――!? 男装女子、オネエと一緒に『可愛い女の子』にイメチェンを目指します!

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop