恋愛する気はなかったのに、年下の彼に甘やかされてます
身近に潜む魔物
ーーけいsideーー


冷たい空気の中、

エンジン音だけがやけに響く。

「……さっむ」

白くなる息を吐きながら、

ハンドルに肘を乗せた。

本当なら、まだアイツといれたのに。


「ったく。タイミングわりぃな…」


そう、ぼやきながらも

どこか慣れた手つきで作業を進める。

仕事モード。

頭も、体も、

もう完全に切り替わってる。

……はずなのに。


ふと、

指先に残る感触。

柔らかい、

あたたかい、

あの感触。


「……」


思わず、

小さく息を吐く。

さっきまで、

そこにいたはずの体温が、

やけに鮮明に蘇る。


「……真奈」


ぽつりと、

無意識に名前が漏れた。
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