親友の御曹司が溺愛彼氏になった一夜
その時だった。

「美桜。こっち向いて」

「え?」

悠真に声を掛けられ、振り向いた瞬間だった。

悠真と唇が重なった。

時間にして数秒。でも、確かに重なった感覚はあって、私は何も言えなかった。

「美桜」

そこには悠真の真剣な顔があった。

「意識しすぎ」

分かっている。こいつは女に本気にならない。

キスだって、周りの影響で俺もってなっただけなんだ。

私は悠真とは反対の方向を向いた。

すると佐伯さんが、向こう側を向いていた。

「佐伯さん」

「あ、終わった?」

気づいている。私と悠真がキスした事に。

「ごめんなさい、変な空気にさせちゃって」

その瞬間、佐伯さんが私の手を握った。

その手は温かかった。

佐伯さんは大人だ。

その大人の余裕に、私は甘えるしかなかったんだ。
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