醜い私が美貌の聖女になったら、危険な恋をして国が滅びた。
 命を削り、痛みと眠気と孤独に耐えながら救った相手だというのに、彼らは最後まで感謝の言葉ひとつ向けなかったことにすら気づいていない。

 人は救われることに慣れると救った存在を忘れる。
 その現実を、エリシアは深く静かに理解していた。

 回復した民に別れを告げ、レジル地方を後にする。
 馬車の窓から見える風景は、どこまでも穏やかで、まるで何事もなかったかのように陽光に照らされていた。

 馬車の中エリシアとブレイク(セドリック)は向かい合う。
 彼が染料でまた髪を茶色くし、前髪で顔を隠しているのをエリシアは少し寂しく思っていた。
 黒衣を纏っている彼は再び王太子補佐官のブレイクだ。

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