醜い私が美貌の聖女になったら、危険な恋をして国が滅びた。
 でも、与えられた役割を果たそうと必死に努力した。

 その努力は誰の為だったか、考えるだけで虚しさが彼女を襲う。

「違わない。君は僕のものだ。これからも未来永劫変わらない。僕と君は婚約していた。君は僕の妃になる為の教育を受けた。僕を想って泣いた夜もあった。そうだろう?」
 一歩、また一歩。
 音楽に合わせて進みながら、彼は過去を一つずつなぞる。

「どうして、平気でそんな事が言えるのですか?」
 エリシアの呼吸が浅くなる。

 気まぐれに溺愛し、自分を捨てた男が、また気まぐれに自分に構ってくる。
 その身勝手さが、どれだけ理解しようと努力してもエリシアには全く理解できない。

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