醜い私が美貌の聖女になったら、危険な恋をして国が滅びた。
 愛され王妃になる人生は悪くなく思えて、その未来に向けて彼女はひたすらに努力した。
 そんな過去を思い返すだけで、今すぐパトリスから離れたくなる。

 そんなエリシアの感情の動きを感じ取ったように、パトリスの腕にじわりと力が籠もる。
 優雅なダンスの型を保ったまま、逃げられない強さ。

「君はいつも、僕のものだった。これからも変わらない」
 その言葉が、エリシアの背骨を伝って心を冷やした。

「違います。私は私自身のモノです。誰のものでもありません」
 焦ったように返したが、エリシアは自信がなかった。

 今まで、何一つ自分で決めさせて貰えなかった。
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