醜い私が美貌の聖女になったら、危険な恋をして国が滅びた。
 妹のラリサから「エリシア様、最近薔薇を育てるのに夢中なの」と聞けば、図鑑を開き、品種や育て方を丸暗記した。
(どうして、こんなにもエリシア・クルーシーが好きなんだ)

 情けないと思いながらも、彼女をひたすらに想う時間さえ愛おしかった。

 好きな女の子とずっと一緒にいたいという十二歳の少年のささやかで真っ直ぐな夢。
 それは、あまりにも呆気なく打ち砕かれた。

「パトリス王太子殿下が、エリシア・クルーシーと婚約することになったらしい」
 父の言葉を理解するまでに数秒かかった。

 隣にいたラリサが、真っ先に声を荒げる。
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