醜い私が美貌の聖女になったら、危険な恋をして国が滅びた。
 だからこそ、気づいてしまった。

(近すぎる)

 レイディン帝国は、遠い。
 地理的にも、文化的にも、価値観的にも。

 それほどまでに距離のある国が、ここまで急速に王国の懐へ入り込むだろうか。
 条約文。経済協定、軍事交流。

 どれも「平和」の名の下に整えられている。
 だが、読み込めば読み込むほど、帝国が譲歩しているように見えるが逆にも見える。

 エリシアが消えてから、十年。

 王宮の側にありながら立ち入ることを禁じられた結界が張った魔獣の森で、異変が起きた。
 夜明け前、森を覆っていた濃い瘴気が、突如として裂けた。

 白く、柔らかく、しかし圧倒的な光。
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