醜い私が美貌の聖女になったら、危険な恋をして国が滅びた。

17.あの男の思うつぼ

カーテンのわずかな隙間から覗くのは、光を一切拒むような真っ暗闇だった。
 夜空に星があるのかどうかすら分からない。まるで世界そのものが、意図的に息を潜めているかのようだ。

(それほど時間は経っていない)

 エリシアはそう判断した。

 だが、体感する時間は異様に引き伸ばされ、秒針一つ進むたびに胸が締め付けられる。
 夜は、静かすぎた。

 王宮に必ず響くはずの時計の鐘も、衛兵の足音も風が庭を渡る気配すらない。
 この部屋だけが、世界から切り取られ黒い箱の中に封じ込められている。

 蝋燭の炎が、ゆらりと揺れる。
 微かな空気の動きに反応して、炎は細く伸びまた縮む。

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