醜い私が美貌の聖女になったら、危険な恋をして国が滅びた。
 そのたびに天蓋の布が歪んだ影を落とし、壁には意味を持たない不気味な模様が浮かび上がった。
 それはまるで、蠢く何かが内側から這い出そうとしているようにも見えた。

「おやめください。パトリス王太子。このような事は、婚姻前にすることではありません」
 震えを抑えながら、エリシアは必死に声を絞り出した。

 喉が渇き、舌が強張る。
 理性が警鐘を鳴らしているのに、身体は恐怖に支配され、思うように動かない。

 そのとき、視界の端に何かが映った。
 ベッドサイドの小卓に、無造作に置かれた腕輪。

 ーー琥珀の石が埋め込まれた腕輪。
< 189 / 234 >

この作品をシェア

pagetop