醜い私が美貌の聖女になったら、危険な恋をして国が滅びた。
「大丈夫。怒っても君は美しいよ」
 顔が近づく。

 逃げ場は、もうない。
 吐息が再びエリシアの肌にかかった瞬間。
「いやぁぁっ!」

 裂けるような悲鳴が、部屋に響き渡った。

 直後、重厚な扉が激しく開かれる。
 抑え込まれた怒りを全身に纏ったリオネルが、私兵と神官たちを引き連れて立っていた。

 蝋燭の光を背に、その影は大きく床に落ちる。
 空気が、一変した。

「パトリス・ノイダン。聖女冒涜の現行犯として、国際法に則り拘束する」
 リオネルの低く、揺るぎない号令が部屋に落ちた瞬間、空気が凍りついた。

 次の瞬間、扉の向こうから重装の兵士たちが雪崩れ込む。

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