醜い私が美貌の聖女になったら、危険な恋をして国が滅びた。
 金属鎧がぶつかり合う鈍い音、床を踏み鳴らす軍靴。
 先ほどまで甘く歪んでいた空間は、一瞬で現実へと引き戻された。

「なっ、なんだ? 無礼だぞ」

 パトリスが言葉を発するより早く、両腕を捻り上げられ床に膝をつかされる。
 王太子としての威厳も、絹の衣も乱暴な手によって無慈悲に引き剥がされた。

「放せ! 僕が誰だか分かっているのか?」
 叫びは虚しく、兵たちは無言で拘束を完了させる。

 鉄の音が、王太子の自由を完全に封じた。

「エリシア様、大丈夫ですか?」
 リオネルの声が、嵐の後の静寂のように響く。

「リオネル様。これは、一体⋯⋯」
 エリシアの声は震えていた。
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