醜い私が美貌の聖女になったら、危険な恋をして国が滅びた。
「もう良いかしら。かつては片時も離れたくないくらい愛おしい弟がいたけれど、もう側にいたいとは思えないの」

 エリシアの冷たい言葉に、クリフは目を見開く。唇が微かに震え、声にならない嗚咽が漏れた。

 クリフは、エリシアが自分を許して抱きしめてくれると、どこかで期待していたのかもしれない。

 実際、エリシアも本当はそうしてあげたかった。
 泣き虫で優しい弟が、今、自分の目の前で後悔の涙を流していることを、痛いほど理解していたから。

 だが、エリシアは慈悲深い聖女であることを、ここでやめたかった。

 隣には平然と人を騙し、感情すら利用する男、セドリックがいる。

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