醜い私が美貌の聖女になったら、危険な恋をして国が滅びた。
「魔獣の森は危険なところです。食べられたら、どうするつもりだったんですか?」

 その声には、怒りと恐れ、そして深い心配が混じっていた。
 側にいた父マルケルが何か言いかけるが、エリシアは微動だにせず、視線すら向けなかった。

「魔獣より、人間の方がずっと恐ろしいわ」
 ゆっくりと、まっすぐに、弟の瞳を見据える。
 その瞳に涙が滲んでいるのを見て、あえて柔らかく、しかし冷たく言葉を置く。

「聖女様の仰る通りです。何故、人の苦しみを理解できず不用意な言葉を発したのか⋯⋯。後悔しても、もう遅いと理解しております」
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