醜い私が美貌の聖女になったら、危険な恋をして国が滅びた。
「エリシア、それが聖女というものだろう。聖女は人の間違いも慈しむものだ」

 パトリスの悪びれない返しに、怒りが心の奥底から静かに燃え上がる。

 静寂に満ちた神殿の石壁が、その熱を吸い込むように冷たく響く。
 エリシアは静かに震えを抑えるように拳を握った。

 長年封じられてきた聖女の力と、真実を知った覚悟が、深く落ち着いた決意を形作っていた。エリシアは、乾いた笑いを漏らした。

「ははっ」

 そして、はっきりと言い放つ。
「こんな腐った王家に嫁がなくて、本当に幸運でしたわ」

 パトリスを一瞥し、視線をルナに移すと静かに残酷に続けた。
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