醜い私が美貌の聖女になったら、危険な恋をして国が滅びた。
「即効性の高い薬です。明日には完治しています」
 その言葉に、エリシアは思わず彼を睨みつけた。

(そんな薬、持っていたのに⋯⋯どうして?)

 エリシアの胸の奥に、言葉にならない感情が渦巻く。
 苦しんでいる人々をあれほど間近で見ていながら、ブレイクは何もせず、ただそこにいた。

 その時だった。
 外から、慌ただしい足音と叫び声が重なり合う。

 静寂が、一瞬で破られた。
「海賊です! 海賊が攻めて来ました!」

 なだれ込むように走って来た使用人の言葉に、エリシアは目を見開く。

 外では鐘が打ち鳴らされ、人々の悲鳴や怒号が風に乗って届いていた。
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