あと30日で、他人に戻るふたり
部屋は真っ暗だった。


この部屋ってこんなに暗かったっけ、と思いながら電気をつける。

カーテンを閉めて、寝室にバッグを置いてすぐにキッチンへ向かった。


しんとした部屋で、キッチンの調理器具の音だけがやけに響く。
炊飯器に洗米したお米をセットしたところで、玄関から音が聞こえた。

すぐにリビングのドアが開く。

「ただいま」

「おかえりなさい」

彼が帰ってきた。思っていたよりもずっと早い。


「……今日はなに作るの?」

手を洗いにキッチンに来た彼が、私がカウンターに食材を置いているのを見て聞いてきた。

「ホイコーローです」

「…なに?そんなの作れんの?」

「世の中は便利なんです」


自分が開発したわけでもないのに、ちょっと誇らしい気持ちで市販の合わせ調味料を見せる。
『回鍋肉の素』と大きく書かれていた。

それを見て、彼が少し口元を緩める。

「……なるほど」


さっさと出ていくのかと思いきや、ずっとそこにいる。

料理を始めようとする私の隣に立ったまま、なんとなくこちらを見ている。


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