あと30日で、他人に戻るふたり
仕事を終えて、電車に揺られる。

今日は定時に上がれた。
月曜から早く帰れると、まだこの一週間を頑張れそうって思う。

ほんの小さな幸せを宿しながら、流れていく景色を見送ってから時計を確認する。

駅前にある雑貨屋に寄って、スーパーに寄ってもまだ余裕がありそうだ。


足取り軽く、電車を降りた。


雑貨屋は、私みたいな会社帰りのOLや若い女子学生で溢れていた。
それぞれ気になるものを手に取ってみたり、値段を確認してみたり。


買うものが決まっていた私は、ひとつの場所で足を止める。

ルームフレグランスのコーナーだ。

かなりの種類がある中で、香りを確かめながら候補を絞って悩む。


あまり甘くても嫌だし、かといってさっぱりしすぎているのも違う。
定番だけど、石鹸の香りが一番落ち着く気がした。

感覚で選んだひとつを手に、レジへ向かう。
スティックタイプの場所を取らないものを購入した。


玄関に置いたら、帰ってきた時にふわっと香るはずだ。


────まあ、私しか気づかないかもしれないけど。

……いや。
あの人、意外とこういうの気づくんだろうか。

ふとそんなことを思って、すぐに首を振る。


別に、どうでもいいのに。


雑貨屋を出たあとは、スーパーに寄って簡単に食材を買い足す。

あまり凝ったものを作る気にはなれなかったけれど、二人分となると最低限は必要だ。


パンの棚が目に入って、なんとなく足を止めそうになった。

……買わなくてもいいか。
昨日、買ってたはずだし。


買い物を終えた私は、少し足早にマンションへ急いだ。




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