あと30日で、他人に戻るふたり
パソコンを立ち上げると、未読のメールとチャットが一気に流れ込んできた。

週明けほどではないけれど、やることはそれなりにある。
昨日の続きの資料を開いて、修正箇所に目を通す。


今回の案件は、駅前の再開発。

既存のテナントとの調整や、動線の見直し、収支のバランス。
細かいところを詰めていく段階に入っていた。

数字と図面を行き来しながら、違和感がないかを確認していく。
こういう作業は、嫌いじゃない。


「穂村。あの資料、進んでるかー?」

声をかけられて顔を上げると、野崎課長が立っていた。

“あの資料”という表現がなんとなく嫌だったけれど、それは顔には出さない。
“あれ”だの“これ”だので済ませるのが、この課長の特徴でもある。


「あ、はい。さっきひと通りまとめました。動線の部分、少し修正入れてます」

「あ、そう。ちょっと見せて」

席を少しずらして画面を見せると、課長は腕を組んだまま黙って目を通す。

「……うん。悪くないな」

短くそう言ってから、マウスを指さした。

「ここ、もう少しシンプルにできないか?店舗配置、詰めすぎると逆に回遊性落ちるぞ」

「たしかに…」

言われて初めて気づいて、思わず画面を見直す。

「このへん、抜け感あった方が人流が流れると思うから直してくれる?」

「分かりました。修正します」

「よろしくね」


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