あと30日で、他人に戻るふたり
役職がついているだけあって、一応課長も仕事はできる。
人を見て色々と押し付けてくるところ以外は、尊敬できる部分もある。


課長の緩んだネクタイをぼんやり眺めていたら、不意に「あっ、そうだ」と思い出したように課長の視線が向いた。

「どうだい、あの部屋。なんかトラブルとか、居心地の悪さみたいなのある?」

「あー…」

課長に言われるまで、あの部屋が“いわくつき”であることを忘れかけていた。


「そんな話もありましたね」

「おっ、その顔はもしかして、あの部屋気に入った?」

「いえ、そういうことじゃなくて…」

「知らん男と同居してるんだっけか?俺はむしろそっちの方が心配になってきちゃってさ」


ああ、そうだ。
一週間前の私、大騒ぎしたんだった。

取り乱していた自分を思い出してちょっと恥ずかしくなりながらも、なんとか言葉を探す。

「まあ、それは問題ないです。大丈夫です」

「そう?いやー悪いね、ちょっとの間だろうし、出ていかないとか言い出したら、その時は対応するからさ」

「それは────」


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