あと30日で、他人に戻るふたり
仕事を終えて帰宅すると、玄関は真っ暗だった。


ああ、まだ帰ってないのか。
そう思って見下ろすと、見覚えのある黒いスニーカー。

────帰ってる。


あまりにも静かなので、絶対にいないと思っていたから驚く。

パタパタと廊下を進んでリビングを開けると、リビングはカーテンも開いたまま。
外から夜の明かりが入っているだけの、暗いリビング。


その真ん中にあるソファで、彼が寝ていた。


ここで電気をつけるのは違う、と悟った途端に足音を静かにしてしまう。

そっとキッチンの明かりだけをつけて、手を洗おうとシンクを見下ろして「あ…」と声が漏れた。


食べ終えたパスタのお皿とフォークが、水につけられている。

くしゃくしゃになったラップがカウンターにそのままにされていた。


ラップをゴミ箱に捨てて、起こさないように蛇口の水を少しだけ弱くする。
お皿を洗っていると、水の音に混じって、かすかな物音がした。

ふと顔を上げると、ソファの上で彼が少しだけ身じろぎするのが見えた。


「あ……おかえり」

「ただいま」

彼はまだ眠そうにぼんやりしている。

「いま何時だ…」

「七時すぎですよ」

「そんな時間なのか」


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