あと30日で、他人に戻るふたり
改めて尋ねられると、どうしてなのか答えられなかった。

理由を探しても、見つかるわけもなく。
思いっきり言葉に詰まる。

「……分かんないです」

自分で答えておいて、しっくりこない。


「ふーん」

興味があるのかないのか分からない声で返されて、それ以上はなにも続かない。


少しだけ沈黙が落ちる。

テレビの音だけが、やけに大きく聞こえた。

ただひとつ。
この沈黙は、さっきの八代さんとの間に流れたものとは違う。

それだけは、なんとなく分かった。


「……まあ、普通でしたよ」

ぽつりと付け足す。

「そっか」


それで会話は終わったみたいに、また彼はスマホに目を落とした。


ソファでクッションに顔をうずめて、ちらりと横を見る。
少し眠そうな顔で、スマホをいじっている。


この人は私に刺激も与えてこないし、優しい言葉をかけてくることもない。


どうして────

そこまで考えて、やめた。


気づけば、テレビの音が遠くなっていた。

さっきまで考えていたことも、うまくまとまらないままどこかへ流れていく。


「……ねむい」

つぶやいた声も、自分で聞こえないくらいで。

そのまま、意識が落ちる。


「……ほんと、すぐ寝るな」

小さくつぶやく声が、かすかに聞こえた気がした。



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