あと30日で、他人に戻るふたり
サラダを真ん中に置いて、私は唐揚げ弁当を、大地さんは焼肉弁当を食べることになった。

しかしながら、やっぱり量が多い。


「大地さん」

量の多さに悩んだ末に呼んだら、彼が隣で動いた。

「ん?」

「唐揚げ、二つもらってくれません?」

「いいけど足りるの?」

「サラダは食べたいです」

まるで交渉してるみたいな、そんな会話。


テレビの音が流れる中、バラエティー番組のくだらない愉快なネタでつい吹き出していると。

「美月」

と名前を呼ばれた。


……普通にしなきゃ。普通に。普通に。
────普通ってなんだっけ。

頭が真っ白になりながら、「はい」と返事だけして隣は見ない。


「なんか、朝からちょっと変じゃない?」

投げかけられた言葉に、一瞬、箸の動きが止まる。
“普通に”と繰り返される脳内で、身体だけが勝手に動いた。

彼の方をやっと見る。

大地さんは、眉を寄せて私の様子を確認しているみたいにこちらを見ていた。


「変?どのへんが?」

「いや、なんとなく」

合わせた目から、感情が溢れていないか不安になる。
でも、逸らしたら負けな気がして逸らせない。


「まあ、気のせいか」

彼はひとり言みたいにつぶやいて、またお弁当を食べ出した。


ふぅ、とそっと息をつく。


……気づかなければ、こんなふうにならなかったのに。
私だけが動揺しなくて済んだのに。

彼のひとつひとつの言動が気になって、見透かされそうで落ち着かない。


急いでお弁当をかき込むと、空になった容器を重ねて立ち上がる。

「ごちそうさまでした。……先、お風呂いただきます」

「うん」


短い会話を交わして、私はキッチンへ逃げ込んだ。

背中に、まだ視線が残っている気がした。



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