あと30日で、他人に戻るふたり
「どういう風の吹き回しなんですか?」

隣に立って、冷蔵庫から出したレタスを渡す。
そのレタスを、彼が力任せにぐいっとパンの間に押し込む。

力でふわふわしていたパン生地が見事にへこんだ。

朝から笑いがこぼれる。

「ほら、慣れないことするから」

「…トーストは焦げる未来が見えたから」

せめてサンドイッチを、と思ったらしい。


ちゃんとお皿を二枚出しているあたり、ふわりと気持ちがほどける。
胸のあたりが、少しだけやわらかくなる。

……ずるい。

なんでもないふりをして、コップを取りに行った。


「牛乳でいいですか?」

「うん。……ねぇ、これ正解なの?」

「はい?」


呼ばれたので手元を見てみると、いびつな形をしたサンドイッチらしきもの。
挟むだけなのに、こんなビジュアルに仕上がるのが逆にすごい。

「────正解です」

「いま絶対うそついたよね?」


それには答えずに牛乳をついで、逃げるようにリビングへ移動した。


「「いただきます」」

いつものように、二人並んで手を合わせる。


彼がおそらく初めて一人で作ったであろうサンドイッチを、口に運ぶ。

ふわふわのパンではなくなっていたけれど。
ちゃんと、サンドイッチだった。


「……美味しいです」

「……そう?」

「疑ってないで食べてみてくださいよ」

「俺、もうキッチンで一枚食べた」

「はやっ…」

どうりで彼のお皿に乗ってるサンドイッチが少ないわけだ。


朝のまぶしい光が差し込む明るい室内で、テレビの音だけが流れる静かな朝。


まだ週末は、始まったばかりだ。

なんでもない朝なのに、
少しだけ、特別に思えた。




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