あと30日で、他人に戻るふたり
彼は気にする様子もなく、私が持っているトマトの袋をひょいと持ち上げる。

「トマト、どっちでもよくない?」

「うーん…。形とか?新鮮さとか?ちょっと違うかなぁって。どれがいいと思います?」


せっかく聞いてるのに、少しだけ、間があった。

彼はトマトの袋を持ったままふと思い出したように顔を上げる。


「ていうか俺も、そろそろ部屋探さないとな」

私のトマトを見ていた手が、一瞬だけ止まる。

「……そうですね」

「いいとこあったら教えてよ」

「それくらい自分で探してくださいよ」


言いながらも、内心は荒れたままだ。

……そうだよね。
そういう約束なんだから。

こういう話が出るのは、当たり前のことだ。


「トマト、あっちに安いのある。あれでよくない?」

思考が逸れているうちに、私の手からトマトの袋が大地さんによって奪われた。
そのまま売り場に戻され、手招きされた。

安くて不揃いのトマトがごろごろ入った袋が並んでいる。

「きれいじゃなくても、美味しければいいよ」

彼は軽くそう言って、トマトの袋をカゴに入れた。


先を行こうとする大地さんの背中を見ながら、無意識に首元のネックレスに触れる。

───私、この人になにを求めようとしているんだろう。


分からないまま、その背中から目を逸らした。




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