あと30日で、他人に戻るふたり
言葉が出てこなくて、黙り込んでしまう。


「穂村なら分かるでしょ?」

ほんの少しだけ、言い切るみたいな口ぶりだった。

評価されているはずなのに、少しだけ違う方向から見られている気がした。
自分のこれまで抱いていた彼への憧れが、真っ当なものなのか分からなくなる。


「週末あたり、軽く打ち上げでもしようかって話出てるんだよ。穂村も来てよ」

話題が仕事じゃないものへ切り替わって、はっとして言葉に詰まる。

「……あ、はい」

気づけばうなずいてしまっていた。


「よかった。関わった何人か来るからさ。五、六人くらいで飲もうよ」

「分かりました」

「あと、詳細送るね」

それだけ言って、彼は軽く手を振るともう次の仕事へ意識が移ったのか足早にその場を立ち去っていく。


その背中を見送りながら、手元の資料に視線を落とす。

ちゃんと、進んでいる。
結果も出ている。

────はずなのに。

胸の奥に、小さな違和感が残る。

「……どうしてだろう」

小さくつぶやいて、その先の言葉は出てこなかった。




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