あと30日で、他人に戻るふたり
「女の子はそれポイント高いよ。──ずっと思ってたけど、穂村ちゃんって絶対モテるよね?」

「はっ?」

急な話題に、思わず変な声が出る。

「モテたこと、一度もないんですけど」

「ほんとにー?」

「なんでそう思うんですか?中村さん、酔ってるだけですよね?」


私の追求を、彼は華麗にビールをまたひと口飲んでかわす。

「なんか、雰囲気?好きって言われたら断れなそうじゃん」

けっこう失礼なことを中村さんが口走った直後、八代さんが「ハイハイ」とわざとらしく手を叩いた。

「中村、そのへんにしとけって。穂村が困ってるだろ?」

「もっと話したかったのにー」


彼が止めてくれたのはありがたいけれど、ヘラヘラ笑っている中村さんに一言だけ付け加えておいた。

「断りますからね!私だってちゃんと!断ります!無理な時は無理って言えます!」

「分かった分かった」


聞いてるんだか聞いてないんだが、呆れるほどの軽いテンションで中村さんは次の標的に浅井さんを選んで絡み始めてしまった。

……私、この人かなり苦手かも。

そう思いながら、止めに入ってくれた八代さんにちょっとだけ感謝してしまう。


「ごめんね、穂村」

こそっと向かいから中村さんの言動を代わりに謝ってくれた八代さんは、頬杖をつくと「でもさ」とにやりと笑った。

「実際、警戒心は薄い方でしょ?気をつけないと、だよ?」

「そんなつもりないんですけどね」


この時、私はもっと早くに違和感に気づくべきだったんだ。

目の前の人をすっかり信じ切っていたのだから。




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