あと30日で、他人に戻るふたり
「ちょっとちょっと〜、俺も入れてよ!その話!」

猛スピードでビールをおかわりしている中村さんが、ついに私たちの中に入ってきた。

彼はあまり料理は食べないのか、取り分けられたお皿にまだたくさん残っている。
そっちの方が気になって、私はたまたま近くにあったサラダを差し出した。


「中村さん、少し食べた方がいいですよ。ポテサラ食べますか?」

飲みすぎ注意、という意味で言ったのに。
彼はそう受け取らなかったらしい。

「大丈夫!穂村ちゃんって、そういう細かいところ気づいてくれるよね」

「誰かさんとは違うって言いたいんですかー?」

今度は浅井さんが挟んでくる。
彼女はあまり飲んでいないはずなのに、やはり営業部。慣れた感じで中村さんとしゃべっていた。

「まあ、浅井はな!こっち側の人間だから!」

「いいえ。穂村さん側です」

「どこがだよぉ」


なんとなく笑ってごまかして、二人のどちら側にもつかないよう曖昧にやり過ごす。

そうしているうちに、目の前に座る八代さんが私にお皿を出してきた。

「サラダ、俺にくれる?」

「あ、はい。いいですよ」

ポテサラを取り分けると、彼はにこっと笑った。

「穂村はけっこう周り見て、空気読むのは得意だろ?」


あぁ、なんだか、その表現が一番しっくりくるかもしれない。
私はふっと笑って、「そうかもしれません」と小さくこぼした。

「逆に、空気を読むの“だけは”得意なんです」

「それ十分いいことだよ。なぁ?」

八代さんは隣にいる中村さんに同意を求める。
彼もまた、今度は力強くうなずくのだった。


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