あと30日で、他人に戻るふたり
そこからどう部屋に戻ったか、覚えていない。

気がついたら、いつものリビングで、いつものソファに座らされていた。


片付け途中だったテーブルは、大地さんが全部きれいに片付けてくれた。

クッションを抱きしめたまま、ぼんやりとテーブルからあの二人がいた痕跡だけが消されていくのを見ていた。


全部片付いたところで、隣に彼が座る。

テレビから流れてくる音楽番組の陽気な曲が、今はもの悲しい。


「……美月は、別に悪くないと思う」

ただ置かれただけの言葉が、胸に突き刺さる。


「私、そんなふうに見えてたんですね…」

言った瞬間、涙がこぼれた。

泣いているのを見られたくなくて、クッションに顔を押しつける。


「違う」

大地さんの言葉は早かった。遮るみたいに、なかったことにするみたいに、早かった。

「見る側が、人として終わってるだけ」

だから、と続けられた。

「美月は堂々としてていい」


『堂々と』そんなにちゃんと、月曜日からできるかな。

不安に駆られる中で、寄り添うでもなく、触れてくるでもなく、ただ隣にいてくれるという事実だけが。

私を救ってくれた。


隣から、確認するみたいに尋ねられる。

「……月曜、行けそう?」

「……行きます」

「うん」


テレビの音だけが流れる静かな部屋で、私はしばらくクッションを抱えたまま動けなかった。


でも、隣に大地さんがいるだけで。

もう十分だった。



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