あと30日で、他人に戻るふたり
私がドアをそっと開けたからか、こちらには気づいていない。

パソコンの画面には、賃貸情報──ではなく。
たぶん仕事なんだと思う、私には分からないものが広がっていた。

何をしているかも気になったけれど、一番は彼の格好だ。

寝ぐせも直してあって、なんなら服もちゃんと着替えている。
黒い半袖のTシャツに、デニム。

いつも休みの日は決まってスウェットなのに。どうして?


「……おはようございます」

声をかけたら、私がそこにいたとは思っていなかったのか一瞬驚いたような顔をしてこちらを振り返った。

「おはよう」

「すみません、寝まくりました…」

厚ぼったくなっているであろうまぶたを擦りながら言うと、彼はふっと笑った。

「別にいいでしょ、休みなんだから」


私がソファに腰かけても、彼はパソコンを閉じない。
そのまま作業を続けている。

「仕事ですか?」

「うん。暇だからちょっとやってた。明日早く帰りたいし」

「何時に起きたんですか?」

「時計見てない」

彼らしい答えに、朝からふわりと笑みがこぼれてしまった。


「あ、そうだ」


作業している手を止めて、大地さんが立ち上がる。

どこに行くのかと思いきや、ちょいちょいと手招きされたので私もついていくと。
そこはキッチン。

コーヒーが保温されていて、たぶん彼はもう飲んだらしくてシンクの中にコップがひとつ置かれている。


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