あと30日で、他人に戻るふたり
「料理はできないから、せめて米を」

「めっっちゃ助かります」

「そう?よかった。炊き上がりは保証しないけど」

「そこはしてくださいよ」


お互いに、ふっと笑い合う。

仕事の疲れが吹き飛ぶって、こういうことなんだな。
よいしょ、と買い物袋を移動させていると片方を彼が持ってくれた。

「え、重っ。これ持って帰ってきたの?」

「まあ、だいたい一週間分くらいなので…」

「宅配とか頼めばいいのに」


このくだり、いつかもしたなぁなんて思う。
コスパ、タイパ、効率重視らしい、彼の発想だ。

口にする食材を手に取って選びたいこっちのこだわりとか、そういうのは気にしないところ。

違う考え方なのに、一緒にいると不思議と落ち着く。


「いいの。重くても、迷って選びたいんです」

「へぇー」

そう言いながらも、なんだかんだで食材を冷蔵庫に入れる一番めんどくさい作業を手伝ってくれる。


野菜をカウンターに並べていくと、ソワソワしたように隣で大地さんがこちらを覗き込んだ。

「今日は何にするの?」

「カレーです。好きですか?」

「あー、だいぶ好きだな」

珍しくちゃんとそう言うあたり、どうやら好物っぽい。


「夏野菜のカレーって、いいですよねぇ。野菜たくさん採れるし」

私が野菜を洗っていると、さっきから視線を感じる。

ちらりと確認したら、大地さんがもうすでに包丁を手に持っていて。
こらえられなくて、吹き出した。

「切る係に徹しすぎじゃないですか?」

「ざく切りでいい?」

「できれば乱切りがいいなぁ…」

「聞いたことない技だな」


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