あと30日で、他人に戻るふたり
食後のソファに寝そべる時間は、至福のときである。

ふたりで並んで、どうでもいいテレビを見ながら時折私が笑ったりする。


ふと隣を見ると、大地さんもじっとテレビを見ている。

……あれ、今日はスマホ、見ないんだな。


そんなことを思っているうちに、まぶたが降りてきた。

「───あ、どうしよう…」


心の言葉なのか、実際に口から出た言葉なのか、よく分からなくなってくる。

「なに?」

隣で動く気配がしたのは分かったのに、もうそちらを見れない。
するっと力が抜けていく。


「……眠い」

ソファを抱えたまま、半分だけ残っている意識をどうにか起こそうと努力だけはした。
それも虚しく、体が言うことを聞かない。

「いいよ、寝ても」

ちゃんと隣からは返事が返ってくる。

だから私も話したいのに、もう言葉が続かなかった。


だめ。寝たらだめ。
このまま寝たら、大地さんがまた床で寝ることになっちゃう。

起きなきゃ────。


「気にしないで」

私の声が聞こえてるみたいに、また返された。


「おつかれ。おやすみ」


彼の声は、そこで途切れた。


あと覚えているのは、賑やかなテレビの音だけだった。
その音も、少しずつボリュームがしぼられていく。


隣で、大地さんが立ち上がる音がした。
身体にふわりとなにかがかけられる。

またブランケット、奪っちゃった。たぶん。
ごめんなさい。


……今日は、仕事の呼び出し来ないで。

そんなことを思っていたのは、絶対に秘密だ。



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