あと30日で、他人に戻るふたり
彼はぼさぼさの髪の毛をなんとなく手で押さえながら、立ち上がってこちらへ近づいてきた。

「俺はほんとに、どこでも寝れるから気にしないで。──えっ、なんかめちゃくちゃ美味そうなんだけど」

キッチンのカウンターに置かれたホットサンドを見て、彼が目を丸くする。

「罪滅ぼしです。朝ごはん作りました」


レタス、トマト、ハム、チーズを軽くトーストしたパンで挟んだだけの簡単なものだけど。
それでも大地さんはふわりと嬉しそうに笑うのだった。

「昨日の俺が作ったのより、“ちゃんとした”朝食だ」

「ううん。昨日のも、“ちゃんとした”朝食です」

「そうかな」

「誰かのために作るものは、全部“ちゃんとしてる”んです」

「……なるほど」

そんな話をしながら、リビングのテーブルにホットサンドとコーヒーをふたりで運ぶ。


カーテンを開けると、今日もどうやら晴天だ。
もうすでに日差しはかなり強くて、初夏の陽気がべランダを照らしていた。


「……よし。今日も頑張ろう」

私はそう、無意識につぶやいていた。



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