あと30日で、他人に戻るふたり
会議室ではなく、今日は開発部の打ち合わせスペースに集まっていた。


壁際の小さなモニターには、武蔵小金井西口再開発案件の導線図。
休日想定の人流シミュレーションが表示されている。

丸テーブルを囲んでいるのは、私と八代さん、それから開発部の竹中さん。


資料を見ながら、竹中さんが「あー」と小さく声を漏らした。

「昨日話してたイベントスペース前、やっぱり休日かなり混みそうだね」

「ですね。土日の流れ見てると、ファミリー層が長く滞在しそうで」

私も資料をめくりながらうなずいて答える。


以前までなら、“こうかもしれません”と遠慮気味に話していたようなことを、今日は比較的自然に口にできていた。


「ベビーカー同士がすれ違えなくなると、後ろが詰まりそうなんです。だから、この辺に少し休憩スペースを増やせたらなって」

モニターの端を指差すと、八代さんがすぐに視線を向けた。

「たしかに。休日の滞留考えると、その方が自然かも」

普通の声。 普通の温度。

仕事の話だけをしている八代さんは、相変わらず有能で、話も通りやすい。
それが逆に少しだけ苦しかった。


< 300 / 403 >

この作品をシェア

pagetop