あと30日で、他人に戻るふたり
今の仕事が嫌いなわけじゃない。

開発推進部は入社してからずっと所属してきた場所だから、慣れ親しんでもいる。

でも───胸を張って好きと言えるかどうかは別の話で。


やってみたいと思える仕事を、自分の意思で選択したいと思ったのだ。


「……いやぁ、まさか穂村さんからこんな話を聞くようになるなんてなあ。びっくりだよ」

「はい…、私もです」

「心境の変化でも?」

「いえ、」


首を振ろうとしたけれど、思い浮かんだのは。

自分のやりたい仕事を、疲れたともきついとも言わずにやれる人。
当たり前のように、誰かが困らないようにと言える仕事をしている人。
なにを選んでも、「いいんじゃない?」と言ってくれるちょうどいい適当さ。


それから、背中を押してくれた先輩。


「企画部で、色々やりたいと思うことができました」

全部は言わないまでも、この場で言える精一杯の言葉を課長へ伝えた。


「そうか…。分かったよ。人事部には話しておく」

寂しくなるなぁ、と感傷に浸ろうとしている課長に、「あともうひとつ」と付け加える。


「まだあるの?」

「はい。例の……今住んでる部屋なんですが、」

「あぁ!もしかしてなにか出た?」

きらりと課長の目がいたずらっ子みたいに光り出した。

その期待にはまったく応えられないので、申し訳ない気持ちもありつつ。

「出てないんです、なにも」

ひとまず事実だけを伝えていく。


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