あと30日で、他人に戻るふたり
その日も、気づけばあっという間に定時が近づいていた。


企画部への異動願いの話がもう課内で回っているのか、ちらほら声をかけられたりもしたけれど。

不思議と、嫌な気持ちはしなかった。



仕事を終えてスマホを見ると、大地さんから一件だけメッセージが届いていた。


『配送メールまだ来ない』


思わず吹き出してしまった。


この人たぶん、今日一日ずっとこのことしか考えてないと思う。




••┈┈┈┈••

仕事を終えた私は、マンションから歩いて五分の大地さんの会社まで来ていた。

改めて大きなビルを見上げて、大手ってこういうことなんだろうな、と思ってしまう。


会社のエントランスには人が溢れていて、みんな急ぐように早足で出ていく。
ちょうど帰るタイミングのようだ。


外のちょっとした日陰で待っていると、大地さんが同僚らしき人たちと出てくるのが見えた。


……ちゃんと、コミュニケーション取ってる。

そんな場違いなことを考えて見ていると、彼が「待った?」とこちらへ駆け寄ってくる。

「さっき来て涼んでました」

「この暑さ、なんとかなんないのかな」

「あと二ヶ月はこれですよ」

「溶けそうだな」


歩き出した私たちが目指しているのは──商店街。

あの巨大なおせんべいをリベンジしに来たのだ。


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