あと30日で、他人に戻るふたり
そうこうしているうちに、部屋のインターホンが鳴った。

はっとしてモニターをつけると、思いっきり優奈が顔を近づけてこちらを見ている。
ホラー映画かな?

エントランスに住人がいたらびっくりするんじゃないだろうか。

急いでモニターのボタンを押して、

「いま開けるね!」

と声をかけると、『はーい』と明るい声。


あとは、エレベーターで八階に上がってくるはず。

勢いよく振り返ると、大地さんがちょうどさっぱりした顔でソファに寝転んだところだった。


「ねぇ!待って待って!もう来ちゃう」

「知ってるよ、聞こえたもん」

「人によく見られたいとか、そういう気持ちないんですか?」

「え…、ない」

初めて言われたみたいな顔であっさり答えるから、もうこっちも言い返せない。


「俺、気配消すの得意だから。気にしないで」

彼はクッションを枕にしてゴロゴロし出してしまった。

────だめだ、話が通じない!


今度は違う電子音のインターホンが鳴り響いた。

「ほらぁ!来ちゃったってば!」

「今から俺はここにいません」

「AIみたいな言い方やめて!」


とりあえず彼のことは諦めて、私はバタバタと廊下を進んで玄関へ。

慌ててドアを開けたら、なんだかかしこまったような、緊張した面持ちの優奈が立っていた。

ちょっと有名なお店の菓子折りまで手に持っている。


< 396 / 403 >

この作品をシェア

pagetop