あと30日で、他人に戻るふたり
シャワーを浴びて洗面所で整えたあとリビングに戻ると、彼はローテーブルにパソコンを開いてなにかしていた。

朝ごはんは食べたのだろうか?


昨日買っておいたヨーグルトを冷蔵庫から出して、開けながらふと見つけた、キッチンに無造作に置かれているパンの空になった袋。


「ゴミは捨ててくださいね?」

と、一応声をかけてみるも、「うん」という気のない返事。

たぶん、頭に入ってないやつ。


昨日出しっぱなしにしていた、ひと口だけ食べたチャーハンとフライパンを片付けて、私は寝室にいったん入る。

メイクと着替えを済ませ、仕事に行く準備は完了。


……そういえば。

不思議に思って、リビングを覗く。
────まだ、いる。


「藍沢さん?」

「ん?」

呼びかけに、反応はある。
無視はしないけど、視線はパソコンを向いたままだ。


「今日、お仕事は?」

「え?…あ、今日はリモート」

「えっ、いいなあ」

つい本音が出てしまった。


満員電車に揺られなくても済むし、誰にも会わずに一日を完結できる羨ましさ。


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