あと30日で、他人に戻るふたり

4日目 どっちがいい?

スマホのアラームで目が覚めた。

規則的な機械音が鳴り続けていて、寝ぼけた頭でなんとか止める。

いったん枕に顔を埋めて、眠気と格闘する。
五分だけ、あと五分だけ────。

そう思っているうちに、はっと思い出して起き上がった。


ベッドを飛び降りて、寝室のドアを開ける。


締め切ったカーテンの隙間から、朝の光がフローリングの床に細く差し込んでいる。

その先にあるソファで、電気もつけずに彼がパンを食べていた。


昨日出かけた時と同じ服を着ている。
白いTシャツに、黒いパンツ。


「おはようございます」

声をかけると、こちらを振り向いた。

「おはよう」


いつも通りの声。
でも、顔はちゃんと眠そう。そして、寝ぐせひとつない髪の毛。

────まさか、徹夜?


昨日、帰ってきた音は聞いていない。


たしか、初日に生活ルールを決めたはずだ。
夜中の呼び出しや帰宅時は、必ず声をかけるって。


「…昨日、帰ってきたの気づかなかったです」

責めるつもりではなく、素直に思ったからそう言うと、彼は少し考えるように目を逸らしてから

「寝てたから」

と、それだけ返ってきた。


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